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「トモダチ」


駅の伝言板に残る、彼女が記したメッセージ。

──幸せになってね──

胸の奥がさざめく。
自分のことばかり考えていたわたしに気づく。
彼女はいつも、わたしの話を聞いてくれたのに、
わたしは、彼女の話を訊こうとはしなかった。

トモダチを失う予感が去来する。

焦る気持ちで時刻表を眺める。
その横の電光掲示板が、帰りの特急の遅れを知らせていた。

…まだ間に合うかもしれない。

夕暮れに染まる広いホームを夢中で駆け回る。
1番線、2番線、3番線……。
ボストンバッグをさげる会社員や、
リュックを背負う子どもたちをすり抜け、彼女の姿を探した。

初めてできたトモダチ。
あなたのように、何もしないまま失いたくない。

もし会えたら、今度はわたしが、彼女の夢の話をきこう。

誓う心を、風を巻き上げて到着する特急が無残にも打ち砕く。
たくさんの旅人を降ろして乗せて、列車は走り去った。

悲しい気持ちで待合室に戻る。

──そこに、彼女は座っていた。

「大切な人には、会えた?」
「会えた」

笑う彼女に、一言。

「夢の話を聞かせて……」

友の文くり返し読む風荒れて
あかしあの花散り初めの宵

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