「もう一度チャンスを」
休日の午後。
子どもたちのはしゃぐ声や、
パフパフとふとんを叩く音、
カーテンの隙間から漏れる日差しに、
晴れ渡る空が思い描かれる。
でもわたしは、
ソファの上で丸くうずくまり、
届かなかった手紙という現実を考えていた。
あなたの中のわたしという存在。
…わたしは、取り残されてしまったのだろうか。
やっと手を伸ばして、
留守電に残るあなたの声を確かめる。
たった一度だけ、
わたしが聞いたあなたの生活。
機械的な女性の声が日付を告げたとき、
季節が移り変わったことを改めて感じた。
けれど、
コルクボードに飾られたあなたの記事。
写真の隅に記された数字が、
つい最近の出来事だと主張している。
手がかりはまだあった。
気が付いたらわたしは受話器を手にしていた。
この記事が示す事実に、
「もう一度だけチャンスを」
と、心が叫ぶ。
きっと探し当てる。
あなたがどこで何をしているのか。
大丈夫。わたしはまだやれる。
小さく頷くわたしに、風が窓を揺らした。
旅人か放浪の人か夜のうた 甘美なやすらぎいっときたまえ