「返ってきた手紙」
郵便受けに、見覚えのある絵ハガキ。
この街の風景を映し出したものだ。
けげんな気持ちのまま取り上げたそこに、
無機質な赤い文字。
『宛所はありません』
あなたに送ったはずの言葉。
確かに受け止められたはずの想い。
でもそれは、
届く前に、逆戻りしてしまった。
どうして?
未来を描いていた分だけ、
余計に空しさがわたしの全身をおおう。
手元にある絵ハガキは、
もう、出す前と同じ気持ちで触れることなど、
できなくなってしまった。
……あなたがいない。
認めたくない現実が、
わたしのすぐそばまで近づいてきていた。
最初からあなたは、
わたしのそばになんていなかったのかもしれない。
いつもあなたの背中を見つめていたことを思い出す。
本当にもう、
正面からあなたの顔を見ることはできないのだろうか。
テーブルに置かれた絵ハガキ。
木々から漏れる光が、斜めにわたしを見上げている。
その日差しの真ん中に、
わたしの涙が、ポツンと落ちた…。
白い雲きのうの夢を追うように くずれてやがて青空にとけ